会長挨拶

第27回 JPSTSS学会学術集会の開催にあたって

亀田総合病院 脊椎脊髄外科の久保田基夫(写真左)です。岐阜県総合医療センター 脊椎脊髄外科センターの細江英夫先生(写真右)とともに、第27回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会 (JPSTSS) 学術集会を主催させていただきます。

本学会には「個人主体の参加」「整形外科と脳神経外科の集学」「世界同時進行」という三つの基本理念があります。脊椎と脊髄は解剖学的にも機能的にも密接な関係にあり、対象とする疾患も運動器から神経系まで幅広い領域に及びます。志を同じくする整形外科医と脳神経外科医が、診療科の垣根を越えて一つの会場に集い、ディスカッションを通して知識と経験を共有するということは、個人レベルの技術の向上はもとより、日本における脊椎脊髄外科領域の発展にも重要な意味を持つと考えております。

くしくも今年はオリンピックイヤー、鍛え抜かれた選手たちの躍動する姿を楽しみにされている方も多いと思います。前回の東京オリンピックから56年が経ちました。当時は高度経済成長の真っただ中、ブルーインパルスの飛行や疾走するアベベの映像を届けたのは、急速に普及した白黒テレビでした。半世紀をさかのぼるまでもなく、私たちのライフスタイルは大きく変化してきました。

医療も例外ではありません。CTやMRIなどの画像診断技術は日常のものとなり、インスツルメントサージェリーは多様な進化を遂げてきました。医療ロボットの臨床応用が始まり、再生医療も現実のものとなってきました。AI, IoT, VR/ARなどコンピューター技術の臨床応用も進んでいます。近未来の医療風景は、大きく変貌していることでしょう。今回はメインテーマを「基礎に帰る、明日を読む (Back to the Basics, Planning Strategies for Tomorrow)」としました。医療を取り巻く環境が急速に変化する時代に、変化の流れの中でしばし立ち止まり、「どのように発展してきたのか、どの方向に向かっているのか」、皆さんと一緒に考えてみたいと思っています。

基礎に帰る」では、サブテーマとして「バランスを考える」「脊椎のバイオメカニクス」「生体材料の基礎知識」「インスツルメント開発の歴史」など基礎知識を改めて整理し、現在行われているインスツルメント手術を多角的に検証してみたいと考えております。また「先人に学ぶ」では輝かしい業績を残し、今なお現役で活躍されている先輩より、その凝縮したエッセンスを伺いたいと考えています。さらに「痛みを科学する(神経障害性疼痛)」「脊椎外科医が知っておきたい他科疾患の基礎知識」など他科の先生方もまじえて忌憚ない意見交換を行う予定です。 一方「明日を読む」では最近注目されている「神経再生医療」「ロボット工学」「AIで医療がどう変わるか」など、開発に関わっている先生方を講師にお招きして勉強したいと考えています。将来の医療は輝かしい面ばかりではございません。「高齢化・骨粗鬆症社会とどう向き合うか」を骨代謝・外科治療・医療経済など様々な側面から検討させていただく予定です。

上記のサブテーマに即してエキスパートの先生方に,ランチョンセミナー,教育講演,特別講演,Spine Leaders lectureなどの形でご講演いただく予定です。新しい試みとして「Mini Review」を考えております。各セッションのディスカッションのポイントが明確になるように、若手のエキスパートに文献レビューをお願いしております。

本学会は、名前の通り脊椎・脊髄の手術手技、テクニックに特化した学会です。インスツルメントサージェリーを中心とした、脊椎脊髄手術が演題の中心であることは従来と変わりがありません。主題として1)「頚椎変性疾患の病態と治療」2)「腰椎変性疾患の病態と治療」3)「ニューロスパインの極意」4)「失敗に学ぶ」5)「ちょっとした私のアイデア」6)「骨粗鬆症を合併する脊椎脊髄疾患の治療」7)「医療経済を考える」8)「コメディカルから」の8つの主演題を選びました。頚椎変性疾患の病態と治療、腰椎変性疾患の病態と治療では、従来通り変性疾患の病態、保存治療、手術適応などに関する演題を募集いたしますが、サブテーマとして取り上げたグローバルバランス、バイオメカニクス、生体材料などのkey wordsを意識して分析いただければと存じます。「ニューロスパインの極意」ではマイクロサージェリーにかかわらず、これぞニューロスパインといえるような演題を期待しています。詳しくは演題募集要項をご参照ください。

人に個性があるように、学術集会にも個性があります。レガシーと呼んでも良いのかもしれません。垣根を取り払う,発表者に敬意を払う,最先端のディスカッションは、三つの理念に裏打ちされた本学会の特筆すべきレガシーと考えます。若手研究者の発表にも耳を傾け、質疑では叱責するようなコメントではなく、発表者の技術や研究をエンカレッジするようなアドバイスをしてくれる、私が最初に本学会に参加した時の印象でした。本学会に私がはまった理由もここにあります。エキスパートの先生に気軽に声をかけられる雰囲気もこの会の特徴かもしれません。

本学会を通して教えていただいたことを振り返りながら,伝統ある本学会を担当させていただけることを大変光栄に思っております。この会でなくては取り上げることができない様々な企画、参加された先生方の記憶に残るようないろいろな仕掛けを準備しております。

2020年10月2,3日,幕張メッセでお待ちしています。

第27回日本脊椎・脊髄神経手術手技学会(JPSTSS学会)学術集会
会長 : 久保田 基夫(亀田総合病院 脊椎脊髄外科 部長)
副会長 : 細江 英夫(岐阜総合医療センター 脊椎脊髄センター部長)

学術集会会長略歴

氏名 久保田 基夫
1982 千葉大学医学部卒業
1982 千葉大学医学部付属病院脳神経外科
1998 ゲッチンゲン脳神経外科
2005 千葉大学医学部研究院
2006年~現在 亀田総合病院脊椎脊髄外科部長

学術集会副会長略歴

氏名 細江 英夫
1980 岐阜大学医学部卒業
1995 カナダ・モントリオール大学文部省在外研究員
1997 岐阜大学附属病院整形外科講師
2010年~現在 岐阜県総合医療センター 脊椎脊髄センター部長